東京に暮らし始めて、何度引っ越しただろう。どの場所も『青梅(おうめ)街道』が近くに流れていた。
新中野のアパートに暮らしていたころ、伊藤比呂美『青梅(あおうめ)』という詩集に出会った。読んではいけないものを読んでしまったような気がした。そして『青梅』は二十歳だった僕のこころに深くしみ込んだ。
2023年の秋に新宿から青梅まで数回に分けて青梅街道を歩きながらスナップ写真を撮る。神経節に潜んでいた水痘ウイルスがとつぜん活性化して、帯状疱疹になるように、こころの中で「青梅が黄熟する*」。
*伊藤比呂美『青梅』より
瀬戸内逍遥写真展『青梅』
日時:2025年3月4日(火)~9日(日)15:00~20:00
於:高円寺 プラトー・ギャラリー
※伊藤比呂美『青梅』の解説で鈴木志郎康がふれていた『比呂美-毛を抜く話』という映像作品
『比呂美-毛を抜く話』の紹介
(http://shirouyasu.com/films/hiromi/hiromi.html)
前の年に、詩人の正津勉さんを映画に撮って、若い女性詩人として売り出し中の伊藤比呂美さんをフィルムに撮っておこうと思った。そこで、比呂美さんといろいろ話しているうちに、「毛を抜くのが大好き」というので、聞くと、話の内容が生命感というところに触れてくる。それを話しているところを撮ろうと決めた。彼女は自分の毛を抜くとき、抜く自分と抜かれる自分の両方を自覚して興奮してくるという。皮膚が問題だという。撮影していて、彼女の話が立派な身体論になっているのに驚いた。導入部に、ヒカシュウの曲を借りた。制作1981年。作者、46歳。